潜在意識・催眠術・本当の自分

23-07 | インナーチャイルドとの対話—Dさんの物語

Dさんは42歳。人生の半ばを過ぎた女性で、社会的には成功していると見なされる。管理職、家族にも恵まれている。でも、彼女の内面には、ずっと「つまらなさ」が居座っていた。

何をしても、心が満たされない。何かを達成しても、すぐに「次は何をしよう」と思う。そして「何をしてもつまらない」という感覚に戻る。

それは、深い虚無感だ。

「人生、何のためにあるのかわからなくなってしまったんです」

初回カウンセリングでそう言った彼女の目は、本当に疲れていた。

催眠セッションを通じて、その虚無感の源を探ってみることにした。深い催眠状態に入った彼女は、子ども時代へと戻っていった。

彼女が見た情景は、ある意味でありふれたものだった。親が「勉強をしなさい」「いい成績を取りなさい」と求め、彼女はそれに応えることで親からの愛情を得ていた。でも、その愛情の条件は「結果」だ。良い成績を取ればたくさん褒められるが、そうでなければ冷たくされる。

その環境で、小さなDさんは「成功することだけが価値がある」と学んだ。人生の目的は「成功すること」。そして、大人になった彼女は、それを忠実に遂行してきた。勉強をして、いい大学に入って、いい会社に入って、キャリアを積んで。

でも、「成功」という単一の目的で人生を駆動していると、いつかはその目的が虚ろに見える日がくる。彼女はその日がきていたのだ。

催眠状態で、僕はDさんにインナーチャイルド、つまり心の中の「子どもの自分」との対話を促した。

「その子どもに、あなたは何を言ってやりたいですか」

涙ながらに、Dさんは語り始めた。

「ごめんね。本当にごめんね。あなたの本当の気持ちを、ずっと無視してた。あなたが何が好きで、何をしたいのか、そういうことをずっと無視して、ただ親の期待に応えることだけを重ねてきた。でも、あなたはただ『愛されたかった』だけなんだ。成功することじゃなくて、あなたはただ『愛されたかった』」

インナーチャイルドとの対話は、セッションの中で何度も繰り返された。その都度、彼女は子ども時代に無視していた感情と向き合い、それを大人の自分が受け止めた。

セッションの帰り道、Dさんはある決断をした。

「人生をリセットしたいと思うんです。勉強でも、仕事でも、全部。一度、何もかも無視して、自分が本当に好きなことは何か、自分の人生で本当にしたいことは何か、そういうのをゼロから考えたいんです」

それは、大きな決断だ。でも、その決断の中に、Dさんは初めて「生きている実感」を感じていた。