23-06 | 思い込みから解放された—Cさんの物語(後編)
セッションの後、Cさんに大きな変化が起こった。
最初の変化は、営業活動への向き合い方だ。今までは「失敗しないように」という防御的な営業をしていた。でも、セッション後は、違う。「自分のやり方を試してみよう」という探索的な営業になった。
その結果、成績が上がった。パラドックスだ。思い込みを手放した方が、かえってパフォーマンスは良くなったのだ。なぜなら、創意工夫が生まれるからだ。「こういう切り口で提案したら、どう反応するだろう」という実験精神が戻ってきた。
同時に、人間関係も変わった。以前のCさんは、営業活動を通じて人と関わるときも、どこか縮こまっていた。相手を説得しようとするのではなく「失敗しないようにしよう」と保身していた。
でも、思い込みから解放されると、相手を心から聞き始めた。相手の本当の困りごとは何か。自分たちの商品でそれが解決できるのか。そういった対話が生まれ始めたのだ。その結果、顧客との関係は深くなり、紹介も増えた。
3ヶ月後、Cさんは部署で表彰された。でも、その栄光より大切なのは「自分は営業に向いてる」という実感だ。それは外部からの評価ではなく、自分の内部から湧き上がる確信だ。
セッションを続けて6ヶ月目、Cさんは新しいチャレンジを始めていた。
「営業で身につけたスキルを、他の分野にも活かしてみたいと思うんです。実は、起業家の育成に関わる仕事に興味があって」
その言葉は、彼が本当に解放されたことを示していた。かつては「自分は営業に向かない」という思い込みが彼の視野を奪っていた。でも、その思い込みが外れると「自分は何ができるか」という問いに変わった。
最も興味深いのは、彼がかつてのパートナーへの恨みを手放していたことだ。
「あの人の言葉がなかったら、ここまで深く自分と向き合う機会もなかったかもしれないんです」
その寛容さ。かつてのCさんには考えられない変化だ。思い込みから解放されるとは、単に「自分は営業に向いている」と信じることではない。むしろ「過去の評価に自分を委ねないこと」「自分の人生を自分で定義すること」の大切さを学ぶ、そういった総合的な変化なのだ。
1年後、Cさんはスタートアップの営業責任者として起業した。かつてのパートナーではなく、別の起業家のもとへ。そこで彼は「営業に向いていない」と思わされていた自分が、実はどれだけ才能があるかを証明し始めていた。