10-03 | あなたの思い込みを見つけるワーク
あなたは、自分がどんな「思い込み」を持っているか、考えたことはないでしょうか。
ここで一つ、お聞きします。次の言葉のうち、あなたが「当たり前」だと感じるものはありますか。
- 「人に迷惑をかけてはいけない」
- 「弱音を吐くのは情けない」
- 「頑張らないと、認めてもらえない」
- 「自分の意見より、相手を優先すべきだ」
もし、どれかに「当たり前でしょう」と感じたなら、それがあなたの「思い込み」です。
思い込みとは、あなたが「絶対に正しい」と信じている、心のルールのことです。やっかいなのは、本人にはそれが思い込みだと気づけないこと。「当たり前」だと思っているから、疑うことすらしないのです。
私は催眠術師・ヒプノセラピストとして、これまで3000件以上の催眠を行ってきました。その経験から断言できます。人を苦しめているものの正体は、多くの場合、この「無自覚な思い込み」です。
この記事は、読んで終わりの記事ではありません。あなた自身が手を動かして、自分の思い込みを見つけるための「ワーク記事」です。紙とペンを用意して、ぜひ実際に取り組んでみてください。所要時間は30分ほどです。
なぜ思い込みは見つけにくいのか
ワークに入る前に、一つだけ大切なことをお伝えします。
思い込みが見つけにくいのは、それが「空気」のようなものだからです。
あなたは普段、空気を意識していませんよね。あって当たり前だから、その存在に気づかない。思い込みも、まったく同じです。心の奥に染み込みすぎていて、その存在に気づけないのです。
ですから、思い込みを見つけるには、コツがあります。それは、「感情」を手がかりにすることです。
思い込みは、ほとんどの場合、強い感情とセットになっています。「許せない」「絶対にこうすべき」「それだけは無理」。こうした強い反応の裏には、必ず思い込みが隠れています。
これから紹介するワークは、すべて「感情」を入り口にして、思い込みを掘り当てていく方法です。順番に進めてください。
ワーク1:「べき」を書き出す(所要5分)
まず、ウォーミングアップです。
紙の一番上に、こう書いてください。「私は〜すべきだ」「人は〜あるべきだ」。
そして、頭に浮かぶ「べき」を、思いつく限り書き出してください。10個を目標にしましょう。
書き方の例を挙げます。
- 「人に頼ってはいけない」
- 「約束は絶対に守るべきだ」
- 「感情的になるのは恥ずかしい」
- 「親には逆らうべきではない」
- 「仕事は完璧にやらなければならない」
ポイントは、「いい・悪い」を判断しないことです。正しいかどうかは、今は考えないでください。ただ、自分の中にある「べき」を、片っ端から書き出していく。
10個書けたら、それらを眺めてください。それが、あなたの心を縛っているルールの一覧です。多くの方が、ここで「こんなにたくさんあったのか」と驚きます。
ワーク2:「強い感情」から掘る(所要10分)
次が、最も大切なワークです。
最近、強い感情が動いた出来事を、一つ思い出してください。怒り、悲しみ、嫉妬、焦り。どんな感情でもかまいません。できるだけ「自分でも、なぜこんなに反応したのかわからない」というものが理想です。
その出来事について、次の質問に、順番に答えていってください。紙に書きながら進めると、効果が高まります。
質問1:何が起きましたか。(事実だけを書く)
例:「同僚が、私に相談もなく、勝手に仕事を進めていた」
質問2:その時、どんな感情になりましたか。
例:「強い怒りと、無視されたような寂しさ」
質問3:その感情の裏にある『〜すべき』は何ですか。
ここが核心です。あなたが怒ったということは、相手が何かの「べき」を破ったということ。それは何でしょうか。
例:「仕事は、相談しながら進めるべきだ」
質問4:では、なぜあなたは、それを『すべき』だと思うのですか。
ここで、もう一段深く掘ります。
例:「相談なしで進められると、自分が必要とされていない気がするから」
質問5:その感覚を、過去にも味わったことはありませんか。
これが最後の問いです。今の感情の根っこは、たいてい過去にあります。
例:「子どもの頃、家族の決め事に、自分だけ入れてもらえなかった」
いかがでしょうか。質問1では「同僚への怒り」だったものが、質問5では「子どもの頃の疎外感」につながりました。
これが、思い込みの正体です。あなたは同僚に怒っていたのではない。「自分は必要とされない存在だ」という、古い思い込みが反応していたのです。
この掘り下げを、別の出来事でも、もう1〜2回やってみてください。あなたの思い込みの「クセ」が、だんだん見えてきます。
ワーク3:思い込みに名前をつける(所要5分)
思い込みが見つかったら、それに「名前」をつけてあげましょう。
これは、私がセッションでもよく使う方法です。名前をつけると、思い込みを「自分そのもの」ではなく、「自分の中にある一つの考え」として、客観的に扱えるようになります。
たとえば、先ほどの例なら、こう名前をつけられます。
- 「必要とされたい君」
- 「完璧にしなきゃ星人」
- 「迷惑かけちゃダメ警察」
少しユーモアのある名前がおすすめです。深刻になりすぎず、ふっと肩の力が抜けるからです。
名前をつけたら、その思い込みに、こう語りかけてみてください。「今まで、私を守ろうとしてくれてありがとう。でも、もう大丈夫だよ」と。
不思議に思うかもしれません。ですが、思い込みは、もともとあなたを守るために生まれたものです。子どもの頃のあなたが、傷つかないために身につけた、いわば心の鎧。それを責めるのではなく、ねぎらってあげる。これが、思い込みを手放す第一歩になります。
50代の自営業・山口さんの体験
ここで、一つ事例を紹介します。
50代の自営業・山口さん(仮名)は、「人に仕事を任せられない」という悩みを抱えていました。何でも自分で抱え込み、体を壊しかけていたのです。
セッションの中で、このワークと同じ手順で掘り下げていきました。すると、こんな思い込みが見つかりました。「人に頼ると、見下される」。
さらに掘ると、根っこが見えてきました。山口さんは若い頃、一度だけ人に頼ったことがあったそうです。ですが、その時、ひどい裏切られ方をした。その経験から、「頼ること=危険」という思い込みが、深く刻まれていたのです。
山口さんは、その思い込みに「ひとりぼっち防衛隊」と名前をつけました。そして、語りかけました。「あの時、僕を守ってくれてありがとう。でも、今の僕は、もう大丈夫だ」と。
それからの山口さんは、少しずつ、人に仕事を任せられるようになっていきました。30年近く抱えていた思い込みが、ゆるんだのです。名前をつけ、ねぎらう。たったそれだけで、人は変わり始めます。
ワーク4:新しい言葉に書き換える(所要10分)
最後のワークです。
見つけた思い込みを、新しい言葉に書き換えていきます。
ただし、ここで注意があります。思い込みを、正反対の言葉でいきなり否定しないでください。たとえば「人に頼ってはいけない」を「人にどんどん頼るべきだ」と書き換えても、心は受け付けません。極端すぎて、嘘くさく感じてしまうのです。
おすすめは、「少しだけ、ゆるめる」書き換えです。
- 「人に頼ってはいけない」→「頼っていい時も、ある」
- 「完璧にやらなければならない」→「8割でも、十分なことが多い」
- 「弱音を吐くのは情けない」→「弱音を吐くのは、人間らしいことだ」
「べきだ」を「〜な時もある」「〜でもいい」に変える。これだけで、心はずっと楽になります。
書き換えた新しい言葉を、紙に大きく書いて、一日一回、声に出して読んでみてください。1週間も続けると、その言葉が、少しずつ心に馴染んでいきます。
思い込みは、変えられます
ここまで、4つのワークに取り組んでいただきました。お疲れさまでした。
最後に、大切なことをお伝えします。
思い込みは、生まれつきのものではありません。どこかの時点で、あなたが身につけたものです。身につけたものなら、ほどくこともできます。これが、希望の根拠です。
私が3000件以上の催眠を行ってきて、何度も目にしてきたこと。それは、長年抱えていた思い込みが、気づいた瞬間からゆるみ始める、ということです。何十年も縛られていた人が、たった一つの気づきで変わっていく。その瞬間を、私は数えきれないほど見てきました。
今日のワークで見つけた思い込みは、あなたが自分の力で掘り当てたものです。それは、催眠を受けるのと同じくらい、価値のある気づきです。
どうか、その気づきを大切にしてください。そして、焦らず、一つずつ、思い込みをゆるめていってください。
あなたの心は、あなたが思っているより、ずっと自由になれます。今日が、その第一歩です。