潜在意識・催眠術・本当の自分

10-01 | 深層意識とのコンタクト—何が起きるのか

あなたは、催眠状態で「自分の深いところ」とつながったとき、いったい何が起きるのか、考えたことはないでしょうか。

催眠と聞くと、こんなイメージを持っているかもしれません。

  • 「意識を失って、何も覚えていないのでは」
  • 「術者に操られて、自分の意思がなくなるのでは」
  • 「特別な人にしか起きない、不思議な体験では」

ですが、実際は、まったく違います。

私は、のべ3000件以上の催眠セッションを行ってきました。その中で確信していることがあります。深層意識とのコンタクトは、決して特別なことではありません。むしろ、あなたが毎晩、眠りに落ちる直前に経験している、あのまどろみの感覚にとても近いものなのです。

この記事では、催眠の中で深層意識とつながったとき、実際に何が起きるのか。私が現場で見てきたことを、できるだけ正直にお伝えしていきます。

深層意識とは何か

まず、言葉を整理しておきましょう。

私たちの意識には、大きく分けて2つの層があります。

一つは「顕在意識」。これは、今あなたがこの文章を読み、理解しようとしている、その意識です。論理的に考えたり、判断したり、計算したりする。普段、私たちが「自分」だと思っているのは、この部分です。

もう一つが「深層意識」、潜在意識とも呼ばれます。こちらは、普段は表に出てきません。ですが、実は私たちの行動や感情の大部分を、この深層意識が決めています。

私たちの意思決定の多くは、自分で気づかないうちに、無意識のうちに行われていると考えられています。つまり、あなたが「自分で決めた」と思っていることの多くは、実は深層意識が先に決めているのです。

ですから、自分を本当に理解したいなら、この深層意識に触れる必要があります。顕在意識だけを見ていても、本当のあなたの半分も見えてこないのです。

なぜ普段は深層意識に触れられないのか

では、なぜ普段、私たちは深層意識に触れられないのでしょうか。

理由はシンプルです。顕在意識が、いつも前面に立って、おしゃべりを続けているからです。

考えてみてください。あなたは一日中、頭の中で何かを考え続けていませんか。「次は何をしよう」「あの人はどう思っているだろう」「あれを忘れないようにしよう」。この絶え間ない思考が、深層意識の静かな声をかき消してしまうのです。

たとえるなら、こうです。深層意識は、湖の底に沈んでいる宝物のようなものです。ですが、水面がいつも波立っていると、底は見えません。催眠とは、その水面を静かに鎮める技術なのです。

水面が静まると、底が見えてくる。それと同じことが、あなたの心の中で起きます。

催眠状態で実際に起きること

ここからが本題です。深層意識とコンタクトした瞬間、あなたの中で何が起きるのか。私が現場で繰り返し見てきたことを、3つに分けてお話しします。

1. 体の緊張がほどけていく

催眠誘導が進むと、まず体が変わります。

肩の力が抜け、呼吸がゆっくりになり、表情がやわらかくなっていきます。これは演技ではありません。深層意識が前面に出てくると、体は自然とリラックスするのです。

多くの方が、この時点で「あ、こんなに力が入っていたんだ」と気づきます。普段、いかに自分が緊張していたか。それを、ゆるんで初めて知るのです。

2. 記憶や感情が、ふっと浮かんでくる

次に起きるのが、これです。

普段は思い出さないような記憶や感情が、向こうから、ふっと浮かんできます。こちらが探しにいくのではありません。深層意識のほうから、見せてくるのです。

子どもの頃の風景。忘れていた誰かの言葉。理由のわからなかった涙。そういったものが、自然と立ち上がってきます。

ここで大切なのは、それらが「今のあなたに必要なもの」だということです。深層意識は、無意味なものを見せてはきません。あなたが今、向き合うべきものを、ちゃんと選んで差し出してくれるのです。

3. 「答え」が、自分の中から出てくる

そして、最も大切なのがこれです。

催眠の中では、答えが「外から」与えられるのではありません。あなた自身の中から、湧き上がってきます。

私は質問を投げかけるだけです。「その時、本当はどう感じていましたか」「あなたが本当に望んでいることは何ですか」。すると、深層意識が、静かに、でも確かに答えを返してくる。

その答えは、いつも、ご本人を驚かせます。「自分でもわかっていなかったことが、わかった」。これが、深層意識とのコンタクトの核心です。

40代の会社員・佐藤さんのセッション

具体的なお話をしましょう。

40代の会社員・佐藤さん(仮名)は、「なぜか毎週日曜の夜になると、強い不安に襲われる」という悩みで、私のもとを訪れました。

ご本人は「月曜から仕事だから、誰でもそうでしょう」と言っていました。確かに、そう思うかもしれません。ですが、佐藤さんの不安は、その範囲を超えて強いものでした。

催眠状態に入っていただき、私はこう問いかけました。「その不安は、いつから始まったものですか」。

すると、佐藤さんの深層意識が、思いがけない記憶を見せてきました。それは、小学生の頃の日曜日の夜の風景でした。

当時、佐藤さんのご家庭では、日曜の夜に父親が必ず不機嫌になっていたそうです。お酒を飲み、家族にあたる。幼い佐藤さんは、その空気を全身で受け止めていました。「日曜の夜は、怖い時間だ」。その感覚が、深層意識に刻まれていたのです。

佐藤さんは、催眠の中で静かに涙を流しました。「ああ、これだったのか」と。

大人になった今、もう父親はいません。怖い夜は、もう来ない。それを、顕在意識ではわかっていました。ですが、深層意識は、ずっとあの夜に縛られていたのです。

この気づきの後、佐藤さんの日曜の夜の不安は、少しずつ和らいでいきました。原因がわかると、人は変われるのです。

ここで、一つ大切なことをお伝えしておきます。佐藤さんは、催眠状態の間、ずっと意識がありました。私との会話も、はっきり覚えています。「気を失っていた」わけでも、「操られていた」わけでもありません。

これは、多くの方が誤解している点です。深層意識とのコンタクトは、意識を手放すことではありません。むしろ、普段より深く、自分の内側に意識を向けている状態なのです。表面のおしゃべりが静かになるぶん、奥の声がよく聞こえる。ただ、それだけのことなのです。

ですから、催眠を怖がる必要はまったくありません。あなたは、いつでも自分の意思でそこにいて、いつでも目を開けることができます。安心して、自分の深いところに耳を澄ませてみてください。

あなた自身でできる、深層意識に触れる練習

「でも、私は催眠を受ける機会がない」。そう思っているかもしれません。

ご安心ください。深層意識に触れる感覚は、あなた一人でも、少しだけ味わうことができます。

ここで、簡単な練習を一つ紹介します。寝る前の5分間で行ってみてください。

  1. 仰向けに寝て、目を閉じます。
  2. 「3、2、1」と数えながら、その数に合わせて、息をゆっくり吐きます。
  3. 体の力を、足先から順番に抜いていきます。足、ふくらはぎ、太もも、お腹、胸、肩、腕、顔。
  4. 全身がゆるんだら、頭の中で、こう問いかけます。「今日、私が本当に感じていたことは何だろう」。
  5. 答えを「探さない」でください。ただ、浮かんでくるのを待ちます。

ポイントは、4つめの問いの後、無理に考えないことです。考えるのは顕在意識の仕事。あなたが待っているのは、深層意識からの返事です。

最初は何も浮かんでこないかもしれません。それでも大丈夫です。続けるうちに、ふっと何かが立ち上がる瞬間が訪れます。それが、あなたが深層意識に触れた瞬間です。

ぜひ、今夜から試してみてください。1週間も続ければ、何かが変わり始めるはずです。

深層意識は、あなたの味方です

最後に、大切なことをお伝えします。

深層意識とのコンタクトを、怖いことだと思わないでください。

深層意識は、あなたを困らせる存在ではありません。むしろ、あなたを守り、本当の幸せへ導こうとしている、あなた自身の最も深い部分です。

私がセッションで何度も見てきたのは、深層意識の優しさです。その人が受け止められる分だけ、その人に必要なものだけを、ちょうどいいタイミングで見せてくる。深層意識は、いつもあなたの味方なのです。

ですから、自分の深いところとつながることを、恐れないでください。そこには、あなたがずっと探していた答えが、静かに待っています。

あなたは、もう十分に頑張ってきました。次は、あなたの深層意識に、少しだけ耳を傾けてみる番です。その対話の中から、あなたの人生は、ゆっくりと、でも確実に変わり始めていきます。