06-09 | 死に向かって生きる—人生を本気にする
あなたは、自分が「いつか死ぬ」ということを、本気で考えたことがありますか?
少し、重たい問いかもしれません。多くの人は、「死」について考えることを、避けようとします。怖いから。不安だから。考えても、仕方がないから。
ですが、私は、あえて、この問いをお届けしたいのです。
なぜなら、「死」を見つめることは、実は、「生」を本気で生きるための、最も強力な方法だからです。
私は催眠セッションを通じて、のべ3000件以上の催眠を行ってきました。その中で、死を意識することで、人生が一変した人を、何人も見てきました。
今日は、「死に向かって生きる」とは、どういうことなのか。お話ししていきます。
私たちは「死」を忘れて生きている
まず、考えてみてください。
あなたは、自分の人生が、永遠に続くかのように、生きてはいないでしょうか。
「いつか、やろう」 「そのうち、本気を出そう」 「まだ、時間はある」
私たちは、無意識のうちに、「明日も、来年も、当たり前にやってくる」と思って生きています。
ですが、これは、本当でしょうか。
人間の命には、必ず、終わりがあります。それが、いつ来るかは、誰にもわかりません。
この、当たり前すぎる事実を、私たちは、普段、すっかり忘れて生きています。
なぜ、忘れるのか。それは、死を意識すると、怖いからです。不安だからです。だから、無意識に、目を背けてしまうのです。
ですが、死から目を背けると、不思議なことが起きます。
「いつまでも時間がある」と錯覚し、人生を、本気で生きられなくなるのです。
死を意識すると、本当に大切なものが見える
ここで、大切なことをお伝えします。
死を意識すると、人生で「本当に大切なもの」が、はっきりと見えてきます。
なぜでしょうか。
「いつか死ぬ」という事実を、本気で受け止めたとき、人は、こう考え始めます。
「限られた時間を、何に使うべきか?」 「本当に大切なものは、何か?」 「やり残して後悔することは、何か?」
死を意識すると、人生の優先順位が、一気にはっきりするのです。
どうでもいいことに使っていた時間が、もったいなく感じられる。後回しにしていたことに、今すぐ取り組みたくなる。大切な人に、ちゃんと気持ちを伝えたくなる。
つまり、死を意識することは、「今を本気で生きる」ためのスイッチなのです。
あるセッションの事例
50代の男性・Nさんのセッションでのことです。
Nさんは、大きな病気を経験した後、私のもとを訪れました。命に別状はなかったものの、初めて、「自分も死ぬのだ」という現実を、突きつけられたそうです。
その経験は、Nさんを苦しめると同時に、彼の人生を、根本から変えました。
催眠の中で、Nさんは、自分の人生を、終わりから振り返る体験をしました。「もし、今、人生が終わるとしたら、何を後悔するだろう?」と。
すると、はっきりと、見えてきたものがありました。
それは、「家族との時間を、もっと大切にすればよかった」という思いでした。Nさんは、仕事ばかりで、家族と向き合う時間を、ずっと後回しにしてきたのです。
セッションの後、Nさんは、生き方を変えました。仕事の量を減らし、家族と過ごす時間を増やしたのです。
Nさんは、こう言いました。「病気は、つらかった。でも、あれがなかったら、私は、本当に大切なものに気づかないまま、人生を終えていたかもしれません」。
死を意識したことが、彼に、本気で生きることを、教えてくれたのです。
「限りがある」からこそ、輝く
少し、考えてみてください。
もし、人生が、永遠に続くとしたら、どうでしょうか。
一見、素晴らしいことに思えるかもしれません。ですが、よく考えると、永遠の人生には、緊張感がありません。
「いつでもできる」と思えば、何も、今やる必要がなくなります。すべてが、先延ばしできてしまう。一日一日の重みが、なくなってしまうのです。
人生が輝くのは、それに「限りがある」からです。
桜が美しいのは、すぐに散ってしまうからです。一日が貴重なのは、二度と戻らないからです。そして、人生が尊いのは、いつか終わるからなのです。
死は、人生の敵ではありません。
死があるからこそ、生が輝く。終わりがあるからこそ、今この瞬間が、かけがえのないものになる。
この事実を受け止めたとき、あなたの人生は、もっと本気の、輝きを取り戻していきます。
死を恐れる本当の理由
少し、踏み込んだ話をします。
私たちは、なぜ、これほど死を恐れるのでしょうか。
もちろん、未知のものへの恐れもあります。ですが、催眠の現場で多くの人と向き合ってきて、私は、もう一つの理由に気づきました。
それは、「まだ、本当に生きていない」という感覚です。
やりたいことを、やっていない。伝えたい言葉を、伝えていない。本当の自分を、生きていない。
そういう「やり残し」の感覚が強い人ほど、死を、強く恐れるのです。
逆に言えば、今を本気で生きている人は、死への恐れが、少しずつ和らいでいきます。「やるべきことは、やってきた」「今日も、精一杯生きた」。そう思える人は、死を、過度に恐れなくなるのです。
60代の女性・Wさんのセッションでのことです。
Wさんは、年齢を重ねるにつれ、死への恐怖が強くなっていました。夜、眠れなくなることもあったそうです。
催眠の中で、Wさんは、自分の人生を振り返りました。すると、たくさんの「やり残し」があることに、気づいたのです。本当はやりたかったこと。会いたかった人。
セッションの後、Wさんは、その「やり残し」に、一つずつ取り組み始めました。長年やりたかった習い事を始め、疎遠だった友人に、連絡を取りました。
すると、不思議なことに、死への恐怖が、和らいでいったのです。
Wさんは、こう言いました。「死が怖かったのは、まだ、ちゃんと生きていなかったからなんですね」。
死への恐れは、「もっと本気で生きなさい」という、心からのメッセージなのかもしれません。
あなた自身でできる問い直し
ここで、あなた自身でできる、セルフワークをお伝えします。
少し、勇気のいるワークですが、ぜひ、試してみてください。
静かな場所で、目を閉じて、こう想像してみてください。
「もし、自分の人生が、あと1年だとしたら」。
そして、こう問いかけてください。
- 「この1年で、何をしたいだろう?」
- 「誰と、過ごしたいだろう?」
- 「やめたいことは、何だろう?」
- 「伝えたい言葉は、誰への、どんな言葉だろう?」
じっくり考えてみてください。
このワークをすると、多くの人が、はっとします。
なぜなら、「あと1年」という制限の中で見えてきたものこそが、あなたが本当に大切にしたいものだからです。
そして、ここが肝心なのですが、その「大切なもの」を、なぜ、1年待つ必要があるのでしょうか。
今すぐ、始めればいいのです。
死を意識して見えてきた大切なものを、今日から、人生に取り入れていく。それが、「死に向かって生きる」ということなのです。
今日という日を、本気で生きる
最後に、大切なことをお伝えします。
「死に向かって生きる」とは、決して、暗く、悲しいことではありません。
むしろ、それは、人生を最も明るく、最も本気で生きるための、知恵なのです。
いつか終わると知っているからこそ、今日を大切にできる。限りがあると知っているからこそ、本当に大切なものに、時間を使える。
私が催眠を通じて見守ってきたのは、死を意識することで、人生を取り戻していく人たちの姿でした。
漫然と生きていた人が、本気で生き始める。後回しにしていた夢に、今、取り組み始める。大切な人に、ちゃんと愛を伝え始める。
催眠という技術は、死への恐れを優しく見つめ、その向こうにある「本当に大切なもの」を浮かび上がらせる手助けをすることができます。死を、ただ恐れるものから、人生を本気にしてくれるものへと、捉え直していくことができるのです。
あなたの人生には、終わりがあります。
ですが、それは、悲しいことではありません。だからこそ、今日という日が、これほどまでに、貴重なのです。
ぜひ、今日という一日を、本気で生きてみてください。後回しにしていたことに、一つ、取り組んでみてください。大切な人に、一言、気持ちを伝えてみてください。その積み重ねが、悔いのない人生を、つくっていきます。