06-07 | 失敗と成功という二項対立を超える
あなたは、「失敗したくない」と思っていませんか?
人は誰しも、成功したいと願います。そして、失敗を恐れます。これは、ごく自然な感情です。
ですが、私たちは、いつの間にか、人生を「成功か、失敗か」という二つの箱に分けて考えるクセを身につけています。
うまくいったら、成功。うまくいかなかったら、失敗。そして、失敗は「悪いもの」「避けるべきもの」として、強く恐れる。
私は催眠セッションを通じて、のべ3000件以上の催眠を行ってきました。その中で、この「失敗と成功」という二項対立に、いかに多くの人が苦しめられているかを、見てきました。
今日は、この「失敗か成功か」という考え方そのものを、超えていくお話をしていきます。
「失敗」という言葉が、人を縛る
まず、考えてみてください。
「失敗」とは、いったい何でしょうか。
私たちは、「思った通りにならなかったこと」を、失敗と呼びます。
ですが、本当に、それは「失敗」なのでしょうか。
挑戦して、うまくいかなかった。その結果、何かを学んだ。次への教訓を得た。だとしたら、それは、本当に「失敗」と呼ぶべきものでしょうか。
実は、「失敗」というのは、私たちが勝手に貼っているラベルに過ぎません。
同じ出来事を、「失敗」と見るか、「学びの機会」と見るか。それは、あなたの解釈次第なのです。
ところが、多くの人は、「失敗」というラベルを貼った瞬間、そこで思考を止めてしまいます。「ああ、失敗した。自分はダメだ」と。
そして、失敗を恐れるあまり、新しいことに挑戦できなくなっていくのです。
成功も、実は確かなものではない
では、「成功」のほうは、確かなものでしょうか。
これも、実は、あやふやなものです。
ある人が「成功」と思うことを、別の人は「成功」と思わない。今は「成功」に見えることが、後から見ると「失敗」だったりする。逆に、当時は「失敗」だと思ったことが、後から人生を変える「転機」になっていたりする。
40代の経営者・Kさんのセッションでのことです。
Kさんは、若い頃、勤めていた会社をリストラされた経験がありました。当時は、人生最大の「失敗」だと思っていたそうです。眠れない夜を、何度も過ごしました。
ですが、そのリストラがきっかけで、Kさんは独立しました。そして、今では、その会社を立派に育て上げています。
Kさんは、こう言いました。「あのリストラがなかったら、今の自分はありません。あれは、失敗だったのか、成功だったのか。今となっては、わからないんです」。
これが、人生の真実です。
ある出来事が「失敗」か「成功」かなんて、その瞬間には、決められないのです。
二項対立を超えると、自由になる
ここで、大切なことをお伝えします。
「失敗か、成功か」という二項対立を超えると、人は、驚くほど自由になります。
なぜなら、すべての経験が、「ただの経験」になるからです。
うまくいったことも、うまくいかなかったことも、どちらも、あなたを形づくる、大切な経験です。そこに、優劣はありません。
この見方ができるようになると、挑戦することへの恐れが、ずっと小さくなります。
「失敗したらどうしよう」ではなく、「やってみて、何が起きるか見てみよう」。
そんな心持ちで、人生に向き合えるようになるのです。
20代の女性・Lさんは、「絶対に失敗してはいけない」という思いが強すぎて、何をするにも、ガチガチに緊張してしまう人でした。
催眠の中で、Lさんは、「失敗」を恐れる気持ちの根っこに、「失敗したら、人に見捨てられる」という思い込みがあることに気づきました。
その思い込みを、深層意識のレベルで、少しずつ手放していった結果、Lさんは変わりました。
「うまくいかなくても、それは、ただの一つの結果。次に活かせばいい」。そう思えるようになったのです。
すると、不思議なことに、ガチガチだった緊張がほぐれ、かえって、いい結果が出るようになっていきました。
なぜ催眠が役立つのか
「失敗を恐れなくていい」。
頭では、わかるかもしれません。ですが、それでも、心の奥では、失敗を恐れてしまう。そういう人は、とても多いのです。
なぜなら、「失敗は悪いものだ」という思い込みは、深層意識に、深く刻み込まれているからです。
子どもの頃、失敗して叱られた。恥をかいた。誰かに笑われた。
そうした経験が、「失敗=危険なもの」という感覚を、心の奥に作り上げています。だから、頭でいくら「大丈夫」と思っても、心が反応してしまうのです。
催眠という技術は、この深層意識に刻まれた「失敗への恐れ」に、直接アプローチすることができます。
恐れの根っこにある記憶を見つけ出し、それを優しく解きほぐしていく。その結果、頭だけでなく、心の深いところで、「失敗しても大丈夫」と思えるようになっていくのです。
「成功し続けなければ」という罠
失敗を恐れる人の話をしてきましたが、実は、「成功」のほうにも、別の罠があります。
それは、「成功し続けなければならない」という思い込みです。
一度成功すると、人は、それを維持しようとします。「次も成功しなければ」「期待を裏切ってはいけない」と。
すると、その「成功」が、いつの間にか、重い鎖になっていきます。
40代の男性・Uさんは、若くして、大きな成果を上げた人でした。まわりから「優秀な人」として、認められていました。
ですが、その成功が、Uさんを苦しめていました。「次も成功しなければ、自分の価値がなくなる」。その恐れから、彼は、新しい挑戦ができなくなっていたのです。
失敗するのが怖いから、確実なことしかやらない。守りに入る。気づけば、若い頃のような、のびのびとした挑戦が、できなくなっていました。
催眠の中で、Uさんは、こう気づきました。「自分は、成功という鎖に、縛られていたんだ」。
「成功し続けなければ」という思い込みを手放したとき、Uさんは、再び、自由に挑戦できるようになりました。「うまくいかなくても、自分の価値は変わらない」。そう思えたからです。
このように、「失敗」だけでなく、「成功」もまた、二項対立の中にとどまる限り、人を縛ります。
大切なのは、成功も失敗も、ただの「経験」として、フラットに受け止めることなのです。
あなた自身でできる問い直し
ここで、あなた自身でできる、セルフワークをお伝えします。
まず、これまでの人生で、「失敗だった」と思っている出来事を、一つ思い出してください。
そして、こう問いかけてみてください。
「あの失敗から、私は何を学んだだろう?」 「あの失敗があったから、得られたものはあるだろうか?」 「あの失敗は、その後の人生に、どうつながっただろう?」
じっくり考えてみると、多くの場合、その「失敗」の中に、あなたを成長させた何かが、必ず隠れています。
そして、もう一つ。これから何かに挑戦するとき、こう言い換えてみてください。
「失敗するかもしれない」ではなく、「実験してみよう」。
「実験」には、失敗がありません。うまくいっても、いかなくても、すべては「データ」であり「学び」だからです。
この言葉の置き換えだけで、挑戦への恐れは、ずいぶん小さくなります。
すべての経験が、あなたをつくる
最後に、大切なことをお伝えします。
人生に、無駄な経験は、一つもありません。
うまくいったことも、いかなかったことも、すべてが、今のあなたをつくっています。そして、これからのあなたを、つくっていきます。
「失敗か、成功か」という狭い見方を手放したとき、あなたは、もっと大きな視点で、人生を眺められるようになります。
すべては、流れの中の、一つの経験。
そう思えたとき、あなたは、失敗を恐れずに、挑戦できるようになります。そして、皮肉なことに、失敗を恐れない人のほうが、結果的に、多くのことを成し遂げていくのです。
私が催眠を通じて見てきたのは、「失敗」を恐れて縮こまっていた人たちが、その恐れを手放し、のびのびと人生に挑戦していく姿でした。
あなたも、「失敗か成功か」という二つの箱から、抜け出すことができます。
ぜひ、次に何かに挑戦するとき、「これは実験だ」と思ってみてください。その瞬間から、あなたの人生は、もっと自由で、もっと豊かなものになっていきます。