06-05 | 人間関係の苦しみの本当の原因は何か
あなたは、人間関係で疲れていませんか?
職場の上司。気の合わない同僚。価値観の違う家族。なんとなく距離を感じる友人。
人と関わって生きていく以上、人間関係の悩みは、決してなくなりません。実際、悩みの多くは、人間関係から生まれていると言われます。
私も、催眠セッションの現場で、それを痛感しています。
私は催眠セッションを通じて、のべ3000件以上の催眠を行ってきました。その方々が抱える悩みの、本当に多くが、人間関係に関するものでした。
ですが、その背景を深く見ていくと、ある共通の「本当の原因」が見えてきます。
今日は、人間関係の苦しみの、本当の原因について、お話ししていきます。
「相手の問題」に見えて、実は違う
人間関係で苦しいとき、私たちは、こう考えます。
- 「あの人が、わかってくれない」
- 「あの人が、私を傷つけた」
- 「あの人が、変わってくれない」
すべて、「あの人」が原因に見えます。
確かに、相手に問題がある場合も、あります。それは事実です。
ですが、ここで一つ、立ち止まって考えてみてほしいのです。
同じ相手の同じ言葉でも、ある日はまったく気にならないのに、別の日には深く傷つくことが、ありませんか。
同じ出来事でも、ある人は平気なのに、別の人はひどく苦しむことが、ありませんか。
ということは、苦しみの原因は、必ずしも「相手」や「出来事」だけにあるわけではない、ということです。
苦しみの大きさを決めているのは、それを受け取る「あなたの内側」なのです。
人間関係は「鏡」である
ここで、大切な考え方をお伝えします。
人間関係は、しばしば「鏡」のように働きます。
どういうことか。
あなたが、ある人に強く反応するとき。その人のある言動が、どうしても許せないとき。その奥には、たいてい、あなた自身の中にある「何か」が隠れています。
例えば、「あの人は自己中心的だ」と強く感じるとき。実は、自分の中にある「もっと自分を優先したい」という、抑え込んだ気持ちが反応していることがあります。
「あの人はだらしない」と許せないとき。実は、自分が「きちんとしなければ」と必死に頑張ってきた裏返しであることがあります。
つまり、相手に対する強い反応は、あなた自身の心の奥にあるものを、映し出しているのです。
これは、最初は受け入れにくい考え方かもしれません。
ですが、催眠セッションの中で、この「鏡」の仕組みに気づいた人は、人間関係が驚くほど楽になっていきます。
あるセッションの事例
40代の女性・Iさんのセッションでのことです。
Iさんは、職場のある後輩のことが、どうしても許せませんでした。「あの子は、すぐ人に甘える。自分でやろうとしない」。その後輩を見るたびに、強いイライラがこみ上げてきたそうです。
催眠の中で、私はIさんに、こう問いかけました。「その後輩を見て感じる気持ちは、あなたの過去のどこかとつながっていませんか?」。
すると、Iさんは、子どもの頃の記憶にたどり着きました。
長女として育ったIさんは、「甘えてはいけない」「自分のことは自分でやりなさい」と、ずっと言われて育ちました。本当は甘えたかった。でも、それを我慢してきたのです。
だから、平気で人に甘える後輩を見ると、許せなかった。
「自分が我慢してきたのに、なんであの子は」という気持ちが、イライラの正体だったのです。
この気づきの後、Iさんの後輩への見方は、変わりました。「ああ、私は本当は、甘えたかったんだな」。そう気づいたとき、後輩への怒りは、すっと消えていったそうです。
そして、Iさん自身も、少しずつ、人に頼れるようになっていきました。
相手を変えようとすると、苦しくなる
人間関係の苦しみが深まる、もう一つの原因があります。
それは、「相手を変えようとすること」です。
「あの人が、こう変わってくれれば」「あの人さえ、わかってくれれば」。そう思って、私たちは、相手を変えようと、エネルギーを使います。
ですが、これは、ほとんどうまくいきません。
なぜなら、他人を変えることは、基本的にできないからです。
相手には、相手の人生があり、相手の価値観があり、相手の事情があります。あなたがどれだけ望んでも、相手をコントロールすることはできません。
ですから、「相手を変えよう」とするほど、思い通りにならず、苦しみは深まっていきます。
では、どうすればいいのか。
変えられるのは、相手ではなく、「自分の受け取り方」と「自分の関わり方」だけです。
そして、面白いことに、あなたが変わると、相手との関係も、自然と変わり始めるのです。
期待が、苦しみを生む
人間関係の苦しみには、もう一つ、大きな原因があります。
それは、「期待」です。
私たちは、知らないうちに、相手に、たくさんの期待をかけています。
「これくらい、わかってくれるはず」 「家族なんだから、こうしてくれて当然」 「これだけしてあげたんだから、相手も返してくれるはず」
そして、その期待が裏切られたとき、私たちは、傷つき、怒り、苦しみます。
つまり、苦しみは、相手の行動そのものよりも、「自分の期待」と「現実」のギャップから生まれているのです。
ここで、考えてみてください。
期待が大きいほど、ギャップも大きくなります。だから、近い関係ほど、苦しみも深くなりがちなのです。家族や恋人との関係が、しばしば最も苦しいのは、そこに最も大きな期待があるからです。
30代の女性・Sさんは、夫に対して、いつも不満を抱えていました。「もっと気づいてほしい」「言わなくても、わかってほしい」。
催眠の中で、Sさんは、自分が夫に、過剰な期待をかけていたことに気づきました。「言わなくてもわかってくれるはず」という期待。それが裏切られるたびに、傷ついていたのです。
私はSさんに、こう伝えました。「期待を手放して、わかってほしいことは、言葉にしてみましょう」。
Sさんが、期待する代わりに、自分の気持ちを言葉で伝えるようになると、夫婦の関係は、驚くほど穏やかになっていきました。
期待を手放すことは、相手をあきらめることでは、ありません。むしろ、相手を、ありのままに見る、ということなのです。
あなた自身でできる問い直し
ここで、あなた自身でできる、人間関係のためのセルフワークをお伝えします。
今、苦手な人、許せない人を、一人、思い浮かべてください。
そして、こう問いかけてみてください。
「私は、その人の、どんなところが、特に許せないのだろう?」
具体的に、言葉にしてみてください。「だらしないところ」「偉そうなところ」「無責任なところ」など。
それが見つかったら、次に、こう問いかけます。
「その性質は、実は、自分の中にもあるだろうか? あるいは、自分が必死に抑え込んできたものだろうか?」
この問いに向き合うと、多くの場合、相手への強い反応の裏に、あなた自身の何かが隠れていることに気づきます。
それに気づくだけで、相手への感情は、不思議と和らいでいきます。
そして、最後に、こう考えてみてください。「私は、この人を変えようとしていないだろうか?」。もし、そうなら、その期待を、そっと手放してみてください。
人間関係は、自分を知る道
最後に、大切なことをお伝えします。
人間関係の苦しみは、決して、ただの「やっかいなもの」ではありません。
それは、あなた自身を深く知るための、貴重な「道」でもあるのです。
苦手な人。許せない人。彼らは、あなたの心の奥にあるものを、映し出してくれる鏡です。その鏡を通じて、あなたは、これまで気づかなかった自分自身に出会うことができます。
私が催眠を通じて見守ってきたのは、人間関係の苦しみを通じて、自分自身を深く理解していく人たちの姿でした。
相手を変えようとするのをやめ、自分の内側に目を向けたとき、人間関係は、驚くほど軽くなっていきます。
催眠という技術は、その「鏡」に映ったものに気づき、心の奥にある古い記憶や思い込みを、優しく解きほぐす手助けをすることができます。
あなたは、人間関係に、もう振り回されなくて大丈夫です。
ぜひ、今度、誰かに強く反応したとき、「これは、自分の何を映しているのだろう?」と、自分に問いかけてみてください。その問いが、あなたの人間関係を、根本から変えていく第一歩になります。