06-03 | 苦しみから解放されるために必要なたった1つのこと
あなたは今、何かに苦しんでいませんか?
人間関係のこと。お金のこと。将来への不安。過去の後悔。生きていれば、誰しも、何かしらの苦しみを抱えています。
そして、多くの人が、こう願っています。「この苦しみから、早く解放されたい」。
私も、その気持ちは痛いほどわかります。
私は催眠セッションを通じて、のべ3000件以上の催眠を行ってきました。その方々のほとんどが、何らかの苦しみを抱えて、私のもとを訪れます。
その中で、私は一つの大切な事実に気づきました。
苦しみから解放されるために必要なのは、実は、たった1つのことなのです。
今日は、その「たった1つのこと」について、お話ししていきます。
苦しみは「出来事」ではなく「抵抗」から生まれる
まず、知っておいてほしいことがあります。
私たちは、つい「この出来事が、自分を苦しめている」と考えます。
- 「あの人が、私を傷つけた」
- 「この状況が、私を苦しめている」
- 「あの失敗が、今も私を苦しめている」
ですが、よく見つめてみると、苦しみは「出来事そのもの」から生まれているわけではありません。
苦しみは、その出来事に対する「抵抗」から生まれているのです。
「こうなるべきではなかった」 「あの人は、こうすべきだった」 「本当は、こうあるべきなのに」
この「べき」という抵抗。現実を「あってはならないもの」として押し返す心の動き。これこそが、苦しみの正体です。
つまり、出来事そのものよりも、それを「受け入れられない」という心の抵抗が、私たちを苦しめているのです。
抵抗するほど、苦しみは大きくなる
ここで、一つのたとえをお話しします。
水の中で、ボールを沈めようとすると、どうなるでしょうか。
押せば押すほど、ボールは強い力で跳ね返ってきます。手を離した瞬間、勢いよく水面に飛び出してきます。
苦しみも、これと同じです。
「こんな感情、感じたくない」と押さえつけるほど、その感情は強くなります。「この現実を、認めたくない」と抵抗するほど、苦しみは大きくなります。
50代の主婦・Eさんのセッションでのことです。
Eさんは、10年前に亡くなったお母さんのことで、ずっと苦しんでいました。「もっと優しくすればよかった」「最後に言えなかった言葉がある」。その後悔を、10年間、必死に押し込めてきたそうです。
ですが、押し込めれば押し込めるほど、その悲しみは、彼女の心の奥で大きくなっていきました。夜、ふとした瞬間に、涙が止まらなくなる。そんな日が続いていたのです。
催眠の中で、私はEさんに、こう促しました。
「その悲しみを、押し返さなくていいんですよ。ただ、感じてみましょう」。
すると、Eさんは、これまで押さえつけてきた感情を、初めて、ありのままに感じることができました。涙が、止まらなくなりました。ですが、その涙の後、彼女の表情は、不思議なほど穏やかになっていったのです。
必要なたった1つのこと、それは「受け入れる」こと
ここまで読んで、もうお気づきかもしれません。
苦しみから解放されるために必要なたった1つのこと。それは、「受け入れる」ことです。
「受け入れる」と聞くと、こう思うかもしれません。「我慢すること?」「諦めること?」。
いいえ、違います。
受け入れるとは、「今、こういう状況がある」「今、自分はこう感じている」という事実を、押し返さずに、そのまま認めることです。
- 「私は今、悲しいんだ」
- 「あの人は、ああいう人なんだ」
- 「この現実が、今、ここにあるんだ」
ただ、それを認める。抵抗をやめる。
すると、不思議なことが起きます。
抵抗をやめた瞬間、苦しみは、その勢いを失っていきます。水中のボールから手を離したように、感情は自然に浮かび上がり、そして、静かに過ぎ去っていくのです。
受け入れることは、変化の始まり
「受け入れたら、何も変わらないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ですが、実は、逆です。
受け入れることは、変化の「始まり」なのです。
30代の男性・Fさんは、転職の失敗をずっと引きずっていました。「あの選択は間違いだった」と、自分を責め続けていたのです。
催眠の中で、Fさんは、その失敗を「失敗」として裁くのをやめました。「あのとき、自分は精一杯選んだんだ」と、当時の自分を受け入れたのです。
すると、何が起きたか。
自分を責めることにエネルギーを使わなくなった分、Fさんは、前を向けるようになりました。「次は、どうしようか」と、未来に目を向けられるようになったのです。
受け入れることは、過去にとどまることではありません。受け入れて初めて、人は前に進めるのです。
「受け入れる」と「諦める」は違う
ここで、よくある誤解を、もう少し丁寧に解いておきたいと思います。
「受け入れる」と聞くと、多くの人が、「諦める」「我慢する」と混同します。
ですが、この二つは、まったく別のものです。
「諦める」は、心の奥で、まだ抵抗が残っています。「本当はこうあるべきなのに、仕方がないから諦める」。その奥には、押し殺した不満が残っているのです。
一方、「受け入れる」は、抵抗そのものを手放すことです。「今、こうなっている。それが事実だ」と、まるごと認める。そこには、押し殺された不満が残りません。
だから、「諦めた」人は、いつまでもモヤモヤを抱えます。ですが、「受け入れた」人は、心が、すっと軽くなるのです。
40代の男性・Qさんは、長年、自分の身長の低さを「諦めて」生きてきました。「どうせ変えられないから」と。ですが、その奥には、ずっと劣等感がくすぶっていました。
催眠の中で、Qさんは、初めて、自分の身長を「受け入れる」体験をしました。「これが、自分なんだ。それでいい」。
「諦め」が「受け入れ」に変わったとき、長年の劣等感が、すっと溶けていったのです。
Qさんは、こう言いました。「同じ事実なのに、こんなに気持ちが違うとは思いませんでした」。
受け入れることは、後ろ向きなことでは、ありません。むしろ、最も前向きな、心の力なのです。
あなた自身でできるセルフワーク
ここで、あなた自身でできる、シンプルなセルフワークをお伝えします。
今、何か苦しいことがあるなら、静かな場所で、こう自分に問いかけてみてください。
「私は、何に抵抗しているのだろう?」
「こうあるべきなのに、そうなっていない」と感じていることは、何でしょうか。
それが見つかったら、次に、こうつぶやいてみてください。
「今、こういう状況がある。それでいい」 「今、私はこう感じている。それでいい」
最初は、抵抗を感じるかもしれません。「いや、よくない!」という声が出てくるかもしれません。
ですが、何度か繰り返すうちに、心の奥で、少しずつ、力が抜けていくのを感じるはずです。
そして、もう一つ。深く、ゆっくりと、3回、息を吐いてみてください。
息を吐くたびに、抵抗を手放していくイメージで。
これだけでも、心は驚くほど軽くなっていきます。
あなたは、もう苦しまなくていい
私が催眠を通じて見守ってきたのは、たくさんの「解放」の瞬間です。
長年、苦しみを抱えてきた人が、それを「受け入れる」ことで、ふっと表情が緩む。肩の力が抜ける。「なんだ、こんなに楽になれたんだ」とつぶやく。
そのたびに、私は確信します。
苦しみから解放される鍵は、外側にあるのではない。あなた自身の中に、ずっとあったのだと。
催眠という技術は、その「受け入れる」というプロセスを、深層意識のレベルで、優しくサポートすることができます。頭ではわかっていても受け入れられないことを、心の深いところで、本当に受け入れていく。その手助けができるのです。
あなたは、もう、苦しみと戦わなくて大丈夫です。
戦うのをやめたとき、苦しみは、静かに去っていきます。
ぜひ、まずは一つ、今あなたが抵抗していることを、「それでいい」と認めてみてください。その小さな一歩から、あなたの解放は始まります。